洗練された90年代ホームページというウェブデザインジャンル

洗練された90年代ホームページ とは90年代後半から2000年代前半ごくわずかに存在したウェブサイトで、乏しいウェブ制作知識と技術にも関わらず視覚的設計が優れた個人制作ホームページのこと。

典型的90年代ウェブデザイン とは90年代後半から2000年代前半に多く存在したウェブデザインで、個人・企業に関わらず、ウェブブラウザ技術の制限と既存の他ウェブサイトに影響を受け制作されたホームページデザインのこと。

90年代WEBデザインと今

2000年前後の個人ウェブ制作者によって作られたページは、趣味の分野では検索エンジン上位表示されることもよくある。また日本の場合FC2ホームページでのウェブ制作者は当時のウェブデザインを好む傾向があり、今でも日常的に典型的90年代デザインに触れる機会は少なからずある。

一方当時作られた洗練された90年代デザインにめ巡り合うことはむずかしい。もとから絶対数が少ないためデザインジャンルとして認知されておらず、マネしようとする人が少なく類似のデザインがあまりないのである。

進化したCSSやjavascriptに対応したブラウザではウェブデザインの表現は以前より容易になったはずなのに当時の洗練されたウェブデザインのような個性的グラフィックのウェブページを今見かけることはほとんどなくなった。皮肉にもブラウザの進化に伴うサイトのリニューアルでそのような素晴らしいデザインが消えていった例はいくつもある。

またインターネット上にコンテンツをアップロードするのにわざわざ自分でホームページを作る必要がなくなり、特に自由な発想を実現できる一般の個人ウェブ制作者が減っていることもこのデザインジャンル希少化の原因であろう。いや、ウェブ制作に関する情報の普及でむしろ個人ウェブ制作者人口は当時と比べたら増えているのかもしれない。

しかし“ウェブデザイン”というものは定形フォーマット化が加速するのみで、商業的でますますつまらないものになっているのは確かである。逆の見方をすれば、ホームページのデザインはおおよそこういうものであるというテンプレート概念が強いほど洗練された90年代ホームページのデザインはより洗練さが強調されたものに見えてくる。

主なコンテンツ

2000年前後に存在した洗練されたウェブデザインの多くが個人の趣味に関する日記、告知、感想、レポート、作品などを扱ったもの。デザイン同様扱う内容も個性的なものが多い。 2001年日本のオンラインコンテンツ

90年代WEBの特徴

2000年前後のホームページ全般に言えることとしてHTMLがマークアップ言語として機能していない。CSSは使わず、現在では非推奨とされる属性がhtmlに使われた記述、tableレイアウトが基本。そのため今でも当時とあまり変わらないでかたちで存在している。

外部読み込みのCSSでサイト全体をデザイン管理せず、1ページ1ページ手作りしているため、同じサイト内でページごとに大きく異なるデザインを採用するのもこの時代の特徴。 2000年代半ばからはブログの普及とCSSがより活用されるようになり、サイト内デザインはページ間で共通パーツを設けるなどして統一感をもたせるスタイルが定着する。

洗練された90年代のホームページはウェブ作成ソフトは使わず、手打ちによるものと推測される。乏しいコーディング技術でブラウザ上で豊かで独創的なグラフィック表現がされていることがこのジャンルの定義といえる。

１ページあたりのコンテンツはメインのコンテンツと限られたサイト内リンクのみで極めてミニマル。余計な注意書きなど無駄と思われるコンテンツは一切排除されている（おそらくデザイン上の理由で）。誰にも押されないソーシャル系シェアボタンのように当時よく設置されていた訪問者数カウンターなどはもちろん使われていない。典型的90年代デザインでもそのようなページに検索から出くわすことがあるが、それはframe構造のサイトの読み込みのページの一部であって制作者の意図ではない。

より少ないコードで自由にデザイン表現するためデザインされた画像を配置してあるだけのサイトも存在した。 ”SEOは関係ないから”といってデザインされた画像を切り出して配置しただけのLPの制作手法のルーツとなっている。

グラフィック的様式に特定の傾向はないが、写真、イラスト、文字の加工、配置、色、模様、そしてサイトの構造においてアイディアが形式的でないことが大きな特徴。